住み替えでも住宅ローン控除は適用可能!2回目以降に利用する条件と手続きの流れ
住宅ローン控除とは、その年の住宅ローン残高に応じて税金が控除される制度です。節税効果が高い住宅ローン控除ですが、住み替えのときも適用することは可能なのでしょうか。
基本的に、住み替えの際も住宅ローン控除は適用可能です。しかし、細かく要件が設けられていたり他の特例と組み合わせることができなかったりするため、正しい知識を持って計画的に活用することが大切です。
この記事では、住み替え時の住宅ローン控除について説明します。適用の条件や手続きの流れを知って、住み替えにかかる費用の負担軽減を目指しましょう。
お得に住み替えられる住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除は、簡単にいうと「住宅ローンを利用してマイホームを購入する際に税金の負担を軽減する制度」です。
住宅ローン控除は、令和6年度の税制改正において制度の内容が変更されています。ここでは、住み替えのときに必ず押さえておきたい住宅ローン控除について説明します。
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除は、住宅ローンを借りて住宅の新築・取得または増改築等をしたときに、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除できる制度です。正式名称を「住宅借入金等特別控除」といいます。
例えば、住宅ローンの年末残高が3,000万円だった場合、最大21万円の所得税(及び住民税)が控除されるというわけです。控除率は、 新築住宅であっても中古住宅であっても同じになります。
住宅ローン控除の最大控除額・控除期間
住宅ローン控除の詳細は、次のとおりです。
新築/既存住宅 | 住宅の環境性能等 | 借入限度額 | 控除期間 | |
令和4・5年入居 | 令和6・7年入居 | |||
新築住宅 | 長期優良住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | ||
その他の住宅※ | 3,000万円 | 0円 | ||
既存住宅 | 長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 10年間 | |
その他の住宅 | 2,000万円 |
※宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋
※※出典:国土交通省|住宅ローン減税
上記のように、住宅の性能によって最大控除額や控除期間が異なります。特に、新築住宅や買取再販住宅は、省エネ基準に適合していなければ住宅ローン控除を受けられない点に注意しましょう。
住み替えでも住宅ローン控除は使える
住宅ローン控除は何度でも利用できる制度なので、要件を満たしていれば住み替えでも適用を受けることが可能です。ただし、適用を受けるには一定の要件を満たしている必要があります。
ここでは、住宅ローン控除の要件と併用できない特例についてみていきましょう。
住み替えで住宅ローン控除の適用を受けるための要件
住み替えで住宅ローン控除の適用を受けるときは、次の3つの要件を満たす必要があります。
居住要件
住宅要件
年収・期間要件
各要件の詳細をみていきましょう。
※出典:国土交通省|住宅ローン減税
居住要件
住宅ローン減税の対象となる住宅は、所有者が自ら居住するための住宅に限られます。そのため賃貸用、事業用の物件には適用されません。
また住宅ローン控除の適用要件として「2以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供すると認められる住宅であること」とあるため、別荘やセカンドハウスも対象外です。
別荘やセカンドハウスではない場合も、 引き渡しまたは工事完了から6か月以内に居住しましょう。
住み替えの場合は、入居時期に気をつければ居住要件について心配することはないといえます。
住宅要件
住宅ローン控除の適用を受ける住宅は、次の要件を満たしている必要があります。
床面積が50平方メートル以上である※
昭和57年以降に建築または現行の耐震基準に適合している
省エネ基準に適合している(2024年1月以降に建築確認を受けた場合)
※新築住宅の場合、床面積40平方メートル以上に要件緩和(合計所得金額1,000万円以下の年分に限る)
令和6年に住宅ローン減税の制度内容が変更されている点に注意が必要です。2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅の場合、 省エネ基準を満たす住宅でない物件に関しては、住宅ローン減税を受けられません。
年収・期間要件
住宅ローン控除の対象となるのは、合計所得が2,000万円以下の方です。ただし、夫婦でペアローンを組む場合、それぞれの所得が2,000万円以下であれば問題ありません。
床面積が40平方メートル以上50平方メートル以下の場合は、年収要件が1,000万円以下になります。
また、 住宅ローンの借入期間が10年以上であることも要件に含まれています。借入期間が短いと対象外になってしまうので、注意が必要です。
住み替え時に住宅ローン控除と併用できない特例
住み替えで住宅ローン控除が使えなくなるのは、マイホームの売却や買い替えに関する他の特例・減税制度を適用している場合です。制度によっては住宅ローン控除と併用ができないため、利用を検討している場合は注意が必要です。
具体的に、次のような制度を利用したときは、住宅ローン控除が受けられません。
3,000万円特別控除(マイホーム特例)
長期譲渡所得の特例
特定のマイホームを買い替えたときの特例
それぞれどのような制度なのか、概要をみていきましょう。
3,000万円の特別控除(マイホーム特例)
3,000万円の特別控除は、住宅を売却したときの譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度です。
住居用財産を売却して利益が発生したときは、その金額に応じた譲渡所得税がかかります。譲渡所得税の計算方法は、次のとおりです。
譲渡所得=売却価額-(譲渡費用+取得費用)
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除
譲渡所得税=課税譲渡所得×税率
譲渡費用には売却時の手数料や税金、取得費には物件の購入価格や建築代金などが含まれます。マイホーム特例を適用すれば 譲渡所得から3,000万円の控除が可能となるので、譲渡所得税が発生しないケースがほとんどです。
非常に節税効果の高い制度ですが、住宅ローン控除と併用することはできません。
※参考:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
長期譲渡所得の特例
長期譲渡所得の特例は、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が10年を超える土地や建物を売ったときに、譲渡所得税の税率が軽減される制度です。
通常の譲渡所得税の税率は、次の表のとおりです。
区分 | 所有期間 | 税率 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% (所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%) |
長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% (所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%) |
※出典:国税庁|No.3211 短期譲渡所得の税額の計算
国税庁|No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
長期譲渡所得の特例を適用する場合、 所得税の税率が次のように軽減されます。
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額 |
6,000万円以下 | A×10% |
6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
※A=自宅の売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除
※※出典:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
所有期間が長いマイホームを売却して譲渡所得が出た場合、この特例を利用すると高い節税効果が得られます。しかし、こちらも住宅ローン控除と併用することはできません。
特定のマイホームを買い替えたときの特例
特定のマイホームを買い替えたときの特例は、マイホームの売却価格よりも買い替えた住宅の購入金額の方が高い場合、譲渡益への課税を先延ばしにできる制度です。
例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに住み替えたとします。この場合、「5,000万円-1,000万円=4,000万円」が課税対象となりますが、特例の適用を受ければ、住み替えたマイホームを将来譲渡するときまで課税を繰り延べることが可能です。
税金が免除されるわけではないものの、 住み替えのときの金銭的負担を軽減できます。ただし、こちらも住宅ローン控除との併用は認められていません。
住宅ローン控除と特例、どちらがお得になるかの判断基準
住み替えの際、住宅ローン控除と特例では、どちらを利用した方がお得になるかは個々の状況によって異なります。以下のポイントを総合的に考慮し、可能であれば税理士などの専門家に相談して判断することをおすすめします。
判断基準 | 詳細 |
譲渡所得の金額 | 譲渡所得が大きい場合、3,000万円特別控除などの特例を使う方が有利になる可能性が高い。例えば譲渡所得が1,000万円の場合、3,000万円特別控除を使えば課税対象額をゼロにできる |
新居の住宅ローン額 | 住宅ローンの借入額が大きいほど、住宅ローン控除の効果が高くなる。新築住宅で最大年間21万円、13年間で273万円の控除が可能 |
所得税額 | 所得税額が少ない場合、住宅ローン控除の恩恵を十分に受けられない可能性がある |
長期的な視点 | 住宅ローン控除は最長13年間適用されるため、長期的な税負担軽減効果がある。一方、特例は一度きりの適用だが、即時的な効果が大きい |
住み替えで住宅ローン控除を適用するときの手続き
住み替えで住宅ローン控除を適用するときは、以下の手順で手続きを進めます。
必要書類を準備する
翌年に確定申告を行う
2年目以降は年末調整で適用を受ける(給与所得者)
各プロセスの詳細をみていきましょう。
1. 必要書類を準備する
まずは、住宅ローン控除の申請で必要になる書類を揃えましょう。
書類名 | 入手先 |
確定申告書 | 国税庁のホームページまたは税務署 |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 国税庁のホームページまたは税務署 |
本人確認書類の写し | 市区町村役場など |
建物・土地の登記事項証明書 | 法務局 |
建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し | 不動産会社 |
残高証明書 | 借入金融機関 |
耐震基準適合証明書等又は住宅性能評価書の写し | 不動産会社 |
認定通知書の写し又は性能証明書等 | 不動産会社 |
なお、用意すべき書類は住宅によって異なるので、詳細は国税庁のホームページをご覧ください。
2. 翌年に確定申告を行う
次に、住宅ローン控除を適用する住宅を購入した年の翌年2月16日~3月15日の間に確定申告を行います。必要書類が用意できたら、住所を管轄する税務署に提出しましょう。
なお、住宅ローン控除を適用するための確定申告は、Webで行うことも可能です。どちらで申告しても問題ないので、やりやすい方を選択してください。
Web申告については、YouTube「国税庁動画チャンネル」が参考になります。
3. 2年目以降は年末調整で適用を受ける(給与所得者)
給与所得者の場合は、2年目以降は年末調整の手続きのみで住宅ローン控除を受けられます。年末調整の際は、次の2つの書類が必要です。
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(残高証明書)
それぞれ税務署と借入金融機関から送付されるので、紛失しないように保管しておきましょう。必要事項を記入して年末調整の書類に添付すれば、手続きは完了です。
給与所得者でない場合は、 1年目と同様に確定申告で住宅ローン控除の手続きを行う必要があります。
住み替えで住宅ローン控除を適用するときのポイント
住み替えで住宅ローン控除を適用するときは、以下の3つのポイントに注意が必要です。
状況に応じて特例と使い分ける
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は併用可能
同時に2軒分の住宅ローン控除は受けられない
どのようなことなのか、詳細をみていきましょう。
状況に応じて特例と使い分ける
住宅ローン控除は、マイホームに関連する他の特例と併用できません。住宅ローン控除は節税効果の高い制度ですが、場合によっては、3,000万円の特別控除を適用した方が税負担を抑えられる可能性もあります。
どちらがより得になるのかは人によって異なるので、不動産会社や税理士などの専門家に相談しながらシミュレーションしてみることが大切です。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は併用可能
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、マイホームを令和5年12月31日までに売却して新しく住宅を購入したときに譲渡損失が生じた場合、その損失をその年の所得から控除(損益通算)できる制度です。
所得から損失を控除すれば、所得税や住民税などを計算するときに用いる「課税所得額」を減らせるため、大きな節税効果が得られます。また、損益通算を行っても控除しきれない損失については、翌年以降3年間にわたって控除可能です。
住宅ローン控除は他の特例と併用はできませんが、 唯一「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは併用可能です。古い住宅を売却して損失が出たときは、必ず活用しましょう。
※参考:国税庁|No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
同時に2軒分の住宅ローン控除は受けられない
住宅ローン控除は何度でも利用できる制度ですが、同時に2軒分の住宅に適用することはできません。なぜなら、 本制度の対象となるのは「主として住んでいるマイホーム」を購入するために組んだ住宅ローンに限られるためです。
また、そもそも住宅ローン自体が「自ら居住するための住宅を購入するための商品」である点にも注意が必要です。一部の例外を除いて、2軒分の住宅ローンを同時に組むことはできません。
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住み替えにともなってマイホームを新しく購入するときは、一定の要件を満たせば住宅ローン控除の適用を受けられます。住み替えには多くの費用がかかるので、お得な制度をしっかりと活用して負担軽減を目指しましょう。
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