不動産査定の費用は?無料と有料の違いや相場・依頼方法についても
不動産を売却するときには、まず不動産の査定を受ける必要があります。しかしその査定費用について気になる方も多いのではないでしょうか。
不動産の査定には、有料と無料の2種類があります。この記事では、有料と無料それぞれの違いやメリット・デメリット、また有料の費用相場について解説します。
有料査定が必要なケース、無料査定が向いているケースについても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
不動産査定には有料・無料がある
不動産査定には、有料と無料の2種類があります。
有料査定は「鑑定」と呼ばれるもので、国家資格をもつ不動産鑑定士による独占業務です。対して無料査定は不動産会社などによる営業行為のひとつです。営業の一環なので、無料査定は無料なのですね。
それぞれの詳細は詳しく後述しますが、ここでは両者の違いを一覧で確認しておきましょう。
項目 | 有料査定(不動産鑑定) | 無料査定 |
査定者 | 不動産鑑定士(国家資格保有者) | 不動産会社の営業担当者 |
目的 | 公的な評価、法的な根拠づけ | 売却価格の目安、営業活動の一環 |
費用 | 15万〜50万円程度 | 無料 |
所要時間 | 数週間 | 当日〜数日 |
精度 | 高い(不動産鑑定評価基準に基づく) | やや低い(担当者の経験や知識に依存) |
査定方法 | 現地調査、詳細な資料作成 | 簡易査定(机上査定)または訪問査定 |
証拠力 | 裁判や税務で証拠として使用可能 | 参考程度 |
匿名性 | 依頼者の情報が必要 | 匿名での査定も可能 |
営業電話 | なし | ある場合がある |
それでは有料査定と無料査定、それぞれの特徴や違いについて見ていきましょう。
有料の不動産査定(不動産鑑定)とは
不動産における有料査定とは、国家資格をもつ不動産鑑定士によって行われる「不動産鑑定」のことです。
ここでは、有料査定(不動産鑑定)の特徴と必要なケース、費用目安について解説します。
有料の不動産査定(不動産鑑定)の特徴
有料の不動産査定(不動産鑑定)の特徴は、以下の3つです。
- 国家資格をもつ不動産鑑定士によって行われる
- 売却のための査定としては不向き
- 費用・時間がかかる
国家資格をもつ不動産鑑定士によって行われる
不動産鑑定を行えるのは、国家資格である不動産鑑定士だけです。不動産鑑定士は法律で定められた「不動産鑑定評価基準」に従って、不動産の価値や売却価格を算出し、その結果は「不動産鑑定評価書」という書類にまとめられます。
利害関係のない第三者として客観的な判断を下すことができることから、書類は信頼性や正確性が高く、裁判や税務などの公的な場面で証拠として使われることがあります。
売却のための査定としては不向き
有料査定は不動産の価値を客観的に評価することを目的としており、売却のための査定ではありません。有料査定で出た価格が、必ずしも売却できる価格とは限らないのです。
例えば相続税の計算や裁判における財産分与の参考資料のように、不動産の価値を証明する必要がある場合に用いるのは有効ですが、売却のための査定としては不向きといえます。
費用・時間がかかる
不動産鑑定には、一定の費用と時間がかかります。 有料査定の費用相場は15万〜50万円ですが、費用はケースバイケースなので、不動産鑑定士事務所や不動産鑑定士が所属する不動産会社に問い合わせましょう(費用について、詳しくは後述します)。
また査定には時間もかかり、不動産鑑定士が現地調査や資料作成を行うため、査定には数週間かかることもあります。
有料査定が必要なケース
不動産の査定には、有料と無料の2種類がありますが、どのような場合に有料査定が必要になるのでしょうか。有料査定が必要になるケースは、以下のような場合です。
- 不動産の価値を証明する必要がある場合
- 不動産の価値を客観的に評価したい場合
- 不動産の価値を高く評価したい場合
不動産の価値を証明する必要がある場合
不動産の価値を証明する必要がある場合とは、例えば以下のような場合です。
- 相続や離婚などの財産分与の際に、不動産の価値を公平に分割したい場合
- 税務や裁判などの公的な場面で、不動産の価値を証拠として提出する場合
- 関係会社間の不動産取引で、不動産の適正価格を証明する場合
不動産の価値を客観的に評価したい場合
不動産の価値を客観的に評価したい場合の例を以下に挙げます。
- 不動産の売却を検討しているが、まだ決めていない場合
- 不動産の売却を急いでいない場合
- 不動産の売却を複数の不動産会社に依頼したい場合
これらの場合には、不動産鑑定士による有料査定が必要ではありませんが、希望する場合には受けることができます。
不動産の価値を高く評価したい場合
不動産の価値を高く評価したい場合とは、例えば以下のとおりです。
- 不動産の特徴や魅力をアピールしたい場合
- 不動産の改修やリフォームを行った場合
- 不動産の周辺環境や将来性が良い場合
これらの場合には、不動産鑑定士による有料査定を行うことで有利になる可能性があります。また不動産の改修やリフォーム、周辺環境や将来性などの要素も、有料査定では考慮されることも。
しかし有料査定にももちろん費用がかかるため、将来見込まれる利益の幅との兼ね合いを考えることが重要になります。
有料査定(不動産鑑定)の費用相場
有料査定(不動産鑑定)の費用相場は15万〜50万円と依頼先によって大きく異なります。ここでは、有料査定(不動産鑑定)の平均費用と費用体系について見ていきましょう。
有料査定(不動産鑑定)の平均費用は18万9千円
国土交通省の不動産鑑定業者の事業実績(令和4年)をもとに参考に計算したところ、有料査定(不動産鑑定)の平均費用は18万9千円でした。ただし、これはあくまで平均値であり、実際の費用は不動産の種類や規模、所在地などによって大きく異なります。
一般的な目安としては、マンションで15万円から50万円、一戸建てで20万円から50万円程度が相場と言われています。土地のみや建物のみの場合は20万円から40万円程度、土地と建物の両方で25万円から65万円程度が目安となります。
不動産鑑定士の依頼費用には3種類の費用体系がある
不動産鑑定士に支払う費用の体系には、主に以下の3種類があります。
- 積み上げ型:不動産鑑定士の作業量に応じて費用を積み上げていく方式
- 報酬基準型:不動産の評価額に応じて費用が決まる方式。国土交通省の「基本鑑定報酬額表」に基づくことが多い
- 定額型:不動産の種類や規模に関わらず、一定の費用が設定される方式
不動産鑑定士事務所によって、どの費用体系を採用しているかは異なります。依頼する際は各事務所の費用体系を確認し、見積もりを取ることをおすすめします。
不動産査定の無料査定とは
不動産査定のうち、一般的に売却を検討する際によく利用されるのが無料の不動産査定です。ここでは、無料査定の特徴や向いているケースについて見ていきましょう。
無料の不動産査定の特徴
無料の不動産査定の特徴は、以下3点です。
- 不動産会社による営業の一環として行われる
- 売却のための査定である
- 費用・時間がかからない
不動産会社による営業の一環として行われる
無料の不動産査定は、多くの場合、不動産会社が営業活動の一環として提供しているサービスです。
不動産会社は過去の取引事例や不動産市況などの情報をもとに、不動産の価値や売却価格を算出します。無料査定の結果は査定書、という書類にまとめられます。査定書は不動産鑑定評価書とは異なり、法的な効力はありません。
売却のための査定である
無料査定は不動産の売却を目的として行われるため、無料査定で出た価格はある程度の確度で売却できる見込みのある価格となります。また査定を通じて、物件の概算価格だけでなく売却までの流れ、必要な準備なども知ることができます。
無料査定は不動産の売却を考えている場合に有効ですが、査定の精度や信頼性は不動産会社によって異なる点は覚えておきましょう。
費用・時間がかからない
無料査定は不動産会社が行う営業活動の一環として行われるため、 費用はかかりません。また不動産会社は、簡易査定(一括査定含む)と訪問査定の2種類の査定方法を用いて査定を行い、有料査定ほど時間もかからないメリットがあります。
無料査定が向いているケース
無料査定が向いているケースは以下のとおりです。
- 不動産の売却を検討しているが、まだ決めていないとき
- 不動産の相場を知りたいが、法的な証拠は必要ないとき
- 不動産の売却を急いでいるとき
これらのケースでは、無料査定のメリットを活かすことができます。
不動産の売却を検討しているが、まだ決めていないとき
例えば不動産の売却を検討しているだけの状態であれば、まずは不動産の相場を知ることが重要です。
不動産の相場を知ることで、売却のタイミングや価格設定の参考にできます。この場合有料ではなく無料査定を利用することで、費用をかけずに不動産の相場を知ることができます。
不動産の相場を知りたいが、法的な証拠は必要ないとき
「資産状況を把握したいとき」や「買い替えやリフォームを検討するとき」など、不動産の相場を知りたいが、法的な証拠は必要ないときにも無料査定がおすすめです。
不動産の売却を急いでいるとき
不動産の売却を急いでいるときも無料査定を選びましょう。具体的には以下のとおりです。
- 転勤や転居などで住まいを変えるとき
- 経済的な理由で現金化するとき
- 長期間空き家になっているとき
これらの場合には不動産を早く売却することが目的であり、査定額の正確性や信頼性はあまり重視しません。 むしろ有料査定の査定にかかる時間がデメリットになります。
不動産査定の依頼方法
不動産査定を依頼する際には、有料の不動産鑑定と無料の不動産査定で異なる手順が必要となります。ここでは、それぞれの査定方法の依頼プロセスについて詳しく見ていきましょう。依頼方法を理解することで、スムーズに査定を進めることができるでしょう。
有料の不動産査定(不動産鑑定)の依頼方法
有料の不動産鑑定を依頼する際は、以下のような手順で進めます。
- 不動産鑑定士事務所を探す
- 事務所に連絡し、依頼内容を説明する
- 見積もりを取る
- 契約書を交わす
- 不動産鑑定士による現地調査と評価が行われる
- 鑑定評価書の受け取り
なお見積もりを取る際には、以下のような点を確認しておきましょう。
- 無料で見積もりを取ることができるかどうか確認すること
- 複数の不動産鑑定士や不動産鑑定会社から見積もり取ること
- 見積もりの際費用だけでなく査定の内容や期間、書類の提出方法なども確認すること
無料の不動産査定の依頼方法
無料の不動産査定(訪問査定)を依頼する際は、以下のような手順で進めます。
- 査定を依頼する不動産会社を選ぶ
- 不動産会社に連絡し、査定を依頼する
- 査定日時を調整する
- 査定当日の立ち会い
- 査定結果の受け取り
無料査定においても、複数の不動産会社に査定依頼をすることが大切です。
不動産査定の費用で注意したいポイント
最後に、不動産査定の費用で注意したいポイントを3つ解説します。
- 不動産会社の査定額=売却価格とは限らない
- 有料査定(不動産鑑定)の費用は依頼先や成果物によって異なる
- 相続における査定の場合、誰か費用を負担するかを検討する
不動産会社の査定額=売却価格とは限らない
不動産会社が提示する査定額はあくまでも目安であり、絶対的なものではありません。査定額と実際の売却価格には差が生じることが多いのです。
査定額は、不動産会社が「この価格なら3ヵ月程度で売れるだろう」と予測した価格です。しかし、実際の売却価格は市場の状況や買い手の動向によって変動します。また売り出し価格と最終的な成約価格の間には、値引き交渉などによる差が生じることもあります。
したがって、売却を前提とした無料査定の場合は複数の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定額を比較検討することが重要です。そのうえで自身の売却目的や希望条件に合った価格設定を行う必要があります。
有料査定(不動産鑑定)の費用は依頼先や成果物によって異なる
有料の不動産査定(不動産鑑定)を依頼する場合、その費用は依頼先や成果物によって異なります。不動産鑑定士事務所ごとに、積み上げ型、報酬基準型、定額型など、様々な費用体系を採用しているためです。
積み上げ型は、不動産鑑定士の作業量に応じて費用が積み上げられる方式です。報酬基準型は、不動産の評価額に応じて費用が決まる方式で、国土交通省の基準に基づくことが多いようです。定額型は、不動産の種類や規模に関わらず、一定の費用が設定される方式です。
有料査定を依頼する際は、事前に複数の事務所から見積もりを取り、費用体系や金額を比較検討することが大切です。また必要とする成果物(鑑定評価書の詳細さなど)によっても費用が変わってくるため、依頼内容を明確にしておくことが求められます。
相続における査定の場合、誰か費用を負担するかを検討する
相続に伴う不動産の査定では、費用負担者を検討しておく必要があります。不動産鑑定の費用は、物件によっては高額になることがあるためです。
相続人全員で公平に不動産の価値を判定してもらうために鑑定を依頼する場合は、各自が費用を均等に負担するのが一般的でしょう。一方、特定の相続人が自己の相続分を知るために鑑定を依頼する場合は、その相続人が費用を負担するケースが多いようです。
いずれにしても、相続人間で費用負担について合意を得ておくことが重要です。トラブル防止のためにも、事前に話し合いを行い、負担割合を明確にしておくことをおすすめします。
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不動産の査定には、有料と無料の2種類があります。それぞれの違いやメリット・デメリットを理解して、自分の目的や状況に合った査定方法を選ぶことが大切です。
不動産鑑定士による不動産査定の費用は、一般的な住宅では15万円から50万円程度かかります。不動産の価値を証明する必要がある場合や、不動産の価値を客観的に評価したい、不動産の価値を高く評価したいなどの場合に有効です。しかし売却を前提とした評価ではないことや、費用や時間がかかることには注意が必要です。
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