親を施設に入れたいがお金がない場合の対策6つ|介護にかかる費用目安も解説

親を施設に入れたいがお金がない場合の対策6つ|介護にかかる費用目安も解説
目次

親の介護施設入所を考えていても、費用面で悩んでいる方は少なくありません。実際、介護施設の利用には相当な費用がかかります。しかし、お金がない場合でも諦める必要はありません。

本記事では、親の介護にかかる費用の目安を解説するとともに、費用負担を軽減するための6つの対策を紹介します。親の介護に悩む方は、ぜひ最後までお読みいただき、適切な選択肢を見つける参考にしてください。

親の介護にかかる費用目安

親の介護にかかる費用は、施設入居と在宅介護で大きく異なります。それぞれの場合について、費用の目安を紹介します。

施設入居の場合

施設入居の場合、費用は施設の種類や提供されるサービスによって大きく変わります。一般的に、以下のような費用が発生します。

費用項目

金額の目安

詳細

入居一時金

0円~数千万円

施設によって大きく異なる。公的施設では不要な場合が多いが、有料老人ホームなどの民間施設では高額になることがある

月々の利用料

5万円~30万円程度

公的施設の場合は月5~15万円程度、民間施設では月15~30万円程度が目安。食費、居住費、介護サービス費などが含まれる

その他の費用

数千円~数万円程度

おむつ代、理美容費、レクリエーション費用などが別途かかる場合がある

また施設入居の費用は、要介護度が高くなるほど増加する傾向にあります。例えば要介護1の場合は月平均5.3万円程度ですが、要介護5になると月平均10.6万円程度まで上がります。

施設入居の場合、平均的な介護期間である5年1ヶ月を考慮すると、総額で約300万円~1,800万円程度の費用がかかると理解しておきましょう。

在宅介護の場合

在宅介護の場合、施設入居と比べて費用を抑えられる可能性がありますが、介護の負担は家族に大きくかかります。在宅介護にかかる費用の目安は以下の通りです。

費用項目

金額の目安

詳細

毎月の介護サービス利用料

平均4.8万円程度

訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの介護保険サービスを利用した場合の費用。介護保険の自己負担分(1割~3割)を支払う。

住宅改修費

平均74万円程度

手すりの設置や段差の解消など、自宅を介護しやすい環境に整えるための費用。介護保険を利用すると、20万円を上限に9割が給付される。

介護用品・福祉用具

数千円~数万円/月

おむつ、車いす、介護ベッドなどの費用。一部は介護保険でレンタルできるが、全額自己負担のものもある。

食費・光熱費

数万円/月

在宅の場合、これらの生活費は別途必要となる。

在宅介護の場合も、要介護度が上がるにつれて費用は増加します。また家族が仕事を辞めて介護に専念する場合は、その分の収入減も考慮しなければなりません。

在宅介護の総額は、平均的な介護期間5年1ヶ月で計算すると、約300万円~500万円程度が目安となります。ただし24時間の介護が必要になった場合などは、この金額を大きく上回ることもあります。

親の介護費用は誰が負担するか

親の介護費用の負担については、多くの方が悩まれる問題です。基本的な考え方と法律上の扱いについて、以下に詳しく説明します。

親の介護費用は親本人の年金や貯蓄から支払うのが基本

親の介護費用は、まず親本人の収入や資産から支払うのが基本的な考え方です。

多くの場合、親の老後の蓄えや年金収入で介護費用をまかなうことができます。例えば厚生年金を受給している方であれば、月額平均で約14万円程度の収入があります。これに加えて貯蓄や不動産収入などがあれば、介護施設の利用料や在宅介護のサービス費用をカバーできる可能性が高くなります。

ただし親の収入や資産だけでは介護費用が不足する場合もあるでしょう。その際には、子どもを含む家族で話し合い、負担の方法を決めることになります。

民法上では子どもには親に対する扶養義務がある

民法第877条第1項では、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定されています。この「扶養」には、経済的な援助も含まれます。つまり、親の介護費用を支払う能力がある子どもは、法律上、その負担を求められる可能性があるのです。

ただし、この扶養義務は無条件に適用されるわけではありません。子どもの経済状況や親との関係性、他の兄弟姉妹の存在など、さまざまな要因が考慮されます。例えば子ども自身の生活が困窮している場合や、親との関係が長年途絶えているような特殊な事情がある場合は、扶養義務が軽減されたり免除されたりする可能性もあります。

親を施設に入れたいがお金がない場合の対策6つ

親の介護施設入所を考えているものの、費用面で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。ここでは、お金がない場合でも親を施設に入れるための6つの対策を紹介します。

これらの方法を組み合わせることで、経済的負担を軽減しつつ、適切な介護サービスを受けられる可能性が高まります。

費用の安い老人ホームを探す

第一に検討すべきは、費用の安い老人ホームを探すことです。特別養護老人ホーム(特養)や養護老人ホームなどの公的施設は、民間の有料老人ホームと比べて費用が抑えられる傾向にあります。

特養の場合、月額の利用料は平均で10万円程度です。これには食費や居住費も含まれており、比較的安価に利用できます。また低所得者向けの補足給付制度を利用すれば、さらに費用を抑えられる可能性があります。

一方、養護老人ホームは、経済的理由や環境上の理由で在宅生活が困難な高齢者向けの施設です。利用料は所得に応じて決まり、年金収入のみの方であれば月額5万円程度で利用できる場合もあります。

ただし、これらの公的施設は入所待機者が多いのが現状です。早めに申し込みを行い、入所までの間は在宅サービスを利用するなどの対策が必要となるでしょう。また民間の老人ホームでも、立地や提供サービスによって料金に差があります。複数の施設を比較検討し、親のニーズと予算に合った施設を探すことが大切です。

公的支援制度を活用する

次に、 公的支援制度の活用を検討しましょう。介護保険制度をはじめとするさまざまな公的支援制度を利用することで、介護にかかる費用負担を軽減できる可能性があります。

公的支援制度

詳細

介護保険制度

要介護認定を受けることで、介護サービス費用の1割から3割の自己負担で各種サービスを利用できる制度。残りの7割から9割は保険でカバーされるため、大幅な費用削減につながる

高額介護サービス費制度

1ヶ月の介護サービス利用料が一定額を超えた場合、超過分が後から払い戻される制度。所得に応じて上限額が設定されており、低所得者ほど負担が軽くなるよう設計されている

特定入所者介護サービス費(補足給付)制度

低所得の方が介護保険施設に入所する際、食費と居住費の負担を軽減する制度。資産要件などの条件はあるものの、該当する場合は大幅な費用削減が可能となる

これらの制度を組み合わせることで、介護施設入所にかかる費用を大幅に抑えられる可能性があります。ただし制度の内容や申請方法は複雑な場合もあるため、地域の包括支援センターや市区町村の介護保険窓口に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

自治体の支援制度を活用する

公的支援制度に加えて、各自治体独自の支援制度についても調べておきましょう。自治体によって提供される支援内容は異なりますが、介護に関するさまざまな助成や補助制度が用意されていることがあります。

自治体の支援制度(一例)

詳細

介護保険料の減免制度

低所得者や災害被災者などを対象に、介護保険料を減額または免除する制度。介護保険の自己負担分の一部を自治体が補助するもので、経済的負担をさらに軽減できる可能性がある

住宅改修費の上乗せ助成

介護保険で認められている20万円の住宅改修費に加えて、自治体が独自に追加の助成を行うケース。より充実した住宅改修が可能となり、在宅介護の環境を整えやすくなる

介護用品の支給や貸与

おむつや車いすなどの介護用品を無料または低価格で提供するサービス。日々の介護にかかる費用を抑えるのに役立つ

これらの制度は自治体によって内容が異なり、また、対象者や申請方法もさまざまです。お住まいの市区町村の福祉課や介護保険課に直接問い合わせ、利用可能な制度について詳しく確認することをおすすめします。

生活保護を申請する

経済的に非常に厳しい状況にある場合、生活保護制度の利用を検討することも一つの選択肢です。生活保護は、最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的とした制度です。

生活保護を受給すると、介護保険料や介護サービスの利用料が免除されます。また施設入所の場合も、食費や居住費を含めた費用が生活保護費から支給されます。

ただし生活保護の申請には厳格な審査があり、収入や預貯金、資産などが一定基準以下であることが条件です。また扶養義務者(子どもなど)の経済状況も確認されます。そのため、親の介護のためだけに生活保護を申請することは難しい場合もあります。

空き家となる実家を売却する

親を介護施設に入所させる場合、実家が空き家となることも。この 空き家を売却することで、介護費用の捻出に充てることができる可能性があります

不動産の売却は、一時的にまとまった資金を得られる方法です。特に都市部や交通の便が良い場所にある実家であれば、高額での売却が期待できるかもしれません。

「すぐに現金化したい」という場合、不動産買取も有力な選択肢となります。不動産買取は不動産会社が物件を購入するため入居者を探す手間がなく、スピーディーな現金化が可能です。

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親の所有する不動産を担保に融資を受ける

最後に、親の所有する不動産を担保に融資を受ける方法があります。これは、不動産を売却せずに資金を調達できる方法で、主にリバースモーゲージと呼ばれる制度が該当します。

リバースモーゲージは、自宅を担保に老後の生活資金や介護費用を借り入れる制度です。通常の住宅ローンとは異なり、借り入れた資金の返済は借り主の死亡時に一括して行われます。そのため生存中は返済の必要がなく、介護費用などに充てることができます。

リバースモーゲージのメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

  • 自宅に住み続けながら融資を受けられる
  • 毎月の返済は利息分のみで済む
  • 老後資金や介護費用の確保が可能
  • 高齢でも融資を受けることができる

デメリット

  • 不動産価値下落のリスクがある
  • 長生きリスクがある(融資限度額に達する可能性)
  • 相続人の同意が必要
  • 契約内容が複雑で理解しづらい

リバースモーゲージの利用を検討する場合は、金融機関や専門家(ファイナンシャルプランナーなど)に相談し、詳細な説明を受けることをおすすめします。

親を施設に入れるときの注意点

親を介護施設に入れる際には、費用面だけでなくさまざまな点に注意を払う必要があります。以下では、これらの注意点について詳しく解説します。

費用が安い公的施設は待機者も多い

公的な介護施設は、民間の施設と比べて費用が安いことが大きな魅力です。しかし、その一方で待機者が多いという課題があります。特に 特別養護老人ホーム(特養)は、入所までに長期間待つ必要がある場合が少なくありません

厚生労働省の調査によると、特養の入所待機者数は全国で約29万人に上ります。都市部では待機期間が3年以上になることも珍しくありません。このため、入所を希望する場合は、できるだけ早い段階から申し込みを行うことが重要です。

また待機中の対策も考える必要があります。例えば、在宅サービスを利用しながら自宅で過ごす、あるいは短期入所生活介護(ショートステイ)を利用するなどの方法があります。これらのサービスを組み合わせることで、入所までの期間を乗り切ることができるでしょう。

施設ごとに入所条件は異なる

介護施設にはさまざまな種類があり、それぞれ入所条件が異なります。親の状態や家族の状況に合った施設を選ぶためには、各施設の入所条件を十分に理解しておく必要があります。

施設種類

主な入居条件

特別養護老人ホーム

  • 原則65歳以上
  • 原則要介護3以上(特例で要介護1、2も可能)
  • 常時医療行為が不要な方

介護老人保健施設

  • 65歳以上(40-64歳の特定疾病該当者も可)
  • 要介護1以上
  • リハビリが必要な方

グループホーム

  • 65歳以上
  • 要支援2または要介護1以上
  • 認知症と診断された方
  • 同一市区町村に住民票がある方

有料老人ホーム(介護付き)

  • 原則60歳以上(施設により異なる)
  • 自立から要介護5まで(施設により異なる)

有料老人ホーム(住宅型)

  • 原則60歳以上(施設により異なる)
  • 自立から要介護5まで

サービス付き高齢者向け住宅

  • 60歳以上(施設により異なる)
  • 自立から要介護5まで

介護医療院

  • 65歳以上(40-64歳の特定疾病該当者も可)
  • 要介護1以上
  • 長期的な医療・介護が必要な方

入所条件を確認する際は、要介護度だけでなく、医療的ケアの必要性や認知症の程度、生活習慣なども考慮する必要があります。また夫婦での入所を希望する場合は、それが可能な施設を探す必要があるでしょう。

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親の介護施設入所に関する費用面の課題と対策について、詳しく解説してまいりました。費用の目安を知り、さまざまな支援制度や対策を活用することで、経済的な負担を軽減できる可能性があります。大切なのは、早めに情報収集し、専門家に相談しながら最適な選択肢を見つけることです。

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